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Doctor Mからのメッセージ#069                     (2007.5)
             家庭血圧計についてのアドバイス
 
 
血圧に何らかの問題のある中年以降の方は家庭に血圧計を常備するのがイロハのイです。家電メーカーの場合や医療器具メーカーの場合などありますが、どれが良いとも言い切ることは出来ません。値段も数千円、1万円台、それ以上の3種類くらいあるようですが、どうなんでしょう? 当院には1種類だけいつも在庫を置いているので、直ぐに買っていって頂く場合もOKですが、家電ショップやドラッグストアで買われても良いかと思います。安いものはそれなりの不都合のリスクが何がしか多いという一般原則はあると思います。しかし、運が好ければ格安のでも役立つこともあるでしょう。値段だけではなく測定部位により種類がありますね。通常は肘関節の辺りで測定するものですが、手関節(リスト)のところで測定するものや、指先で測定するものもあります。多分、多くの医師は肘測定のものを勧めると思います。じゃあ、指測定は不正確かと言いますと、ちゃんと役立つものもあるでしょう。しかし、リストから指と先に行く程測定誤差が生じるリスクは高いと思われます。

 血圧計は少なくとも初めに自分に相性が好いかどうか(自分には誤差が少ないかどうか)検定すべきと思います。当院では、「うっかり」がなければ、全員にこれをするようにしています。外来にその器具を持って来て頂いて、通常の測定値と何度か繰り返して比較するのです。これは器具が故障しているどうかだけではありません。同じ器具でも奥さんには誤差が少ないがご主人には誤差が大きいという可能性があるかもしれません。誤差が大きい場合の方針は、まあいろいろあります。


 どの時刻やタイミングで家庭血圧を測るか。日本医師会が数年前に作成したポスターに「11回、朝の血圧を測りましょう」というのがありました。立派な専門家の監修を受けているものなのですが、私はそれを見て驚きました。確かに、高血圧のかなりの方に未明〜早朝から血圧が不都合に上昇してくる場合があります。これは自律神経の日内リズムが不適切になっている訳で、こういう時間帯に心筋梗塞や脳卒中という重篤なイベントのリスクが高いということ。起床前から次第に血圧が上昇する場合と、起床した途端に血圧が上昇する場合とがあるようです。しかし、だからと言って朝以外の血圧には無頓着で良いと受け取られる指導は誤りであると思いました。専門家の我田引水では困ります。血圧は乱高下も悪そうですが、高い時間が長いのが悪いのでしょう。つまり「高さ」?「時間」の積分だろうと思います。イベント発生リスクの基盤である動脈硬化の進展リスクという本来の基本の話です。

 初めは自分の血圧の変動パターンを知るためにいろんな時間帯で測定すべきと思います。邪魔くさかったら、今日は朝、明日は夕と最初はむしろ気まぐれのタイミングで測定しても好いでしょう。その方が、朝だけとか夜だけとかよりも情報が多い。大事なことはそれを血圧ノートに記録しておくことです。血圧ノートは無料で製薬会社が持ってきて呉れるので困りません。「数字」を書かずにグラフに「点」だけで記録するのがパット読んで一瞬にして判断が出来るのでお勧めです。「数字」を書くと短期間に何度か測定した場合に記録するスペースがないことも不適切です。「折れ線」を入れるのも適切とは思えません。自分が知りたいように自由に測定して「点」だけで記録してください。毎日測定しなくても好いし、何度も測る日があっても好いのです。ご自分にも主治医も本当に状況が判るようにしたいものです。通院の際には毎回血圧ノートを見せて欲しい。それだけで状況が一目瞭然です。血圧ノートを持って来ずに、お互いにゴジャゴジャ言い合っても分からないことだらけです。外来での血圧測定だけでは把握は不十分です。

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