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Doctor Mからのメッセージ#062                     (2006.11)
      18年前に「鈴木その子」のダイエット本を買って読んだ事がある

 祥伝社刊行の「カロリーなんか忘れなさい: 食べて・やせる・鈴木式健康法」初版第33634月発行という新書版の本。かなり売れたのでしょう。本棚に残っているのを久しぶりに開いて見ました。買った時もそうですが、斜め読みです。買った理由は題名が面白かった(逆説的なので興味を持った)からです。ダイエットや栄養に興味があったのではありません。そういう変な結論に達する論理やデーターは何なのだというのを知りたかった。その時は、パラパラと読んで、その論理が判ったと思った時点で読み止めたと思います。彼女の基本論理は、「食事指導をするための食品成分表で、たんぱく質のカロリーも糖質のカロリーと同じ枠で評価されているのは誤りだ。たんぱく質は筋肉などの身体の材料として用いられるのであるから、エネルギーの源として用いられる糖質とは違うカロリーの枠に入れるべきだ。世界中の栄養学は間違っている」。

 
しかし、私は以下のように思った。どんどん筋肉が付いていくなら別であるが、筋肉組織も新陳代謝をしており、分解と合成とが平衡しているものである。つまり、摂取したたんぱく質(アミノ酸)が筋肉に用いられる一方、筋肉組織の古い部分はアミノ酸などに分解されてしまう。分解されたアミノ酸がそのままゴミ箱に捨てられるのではなく、多少のロスはあるにせよ、また再利用されるかエネルギーに利用される。とすると、やはり摂取タンパク質はカロリーとして同じ枠の中で算定しておかねばならない。彼女の基本理論は分解されるたんぱく質の利用を無視してしまった誤りがあると判断しました。

 
晩年、鈴木その子は「美白」などで有名になったが、この本に書いてある通り、学習院短期大学・食品科学専攻で、ご飯を主体とした「鈴木式」食養生法を掲げて活動した。前著の「やせたい人は食べなさい」で有名になったらしい。世間の常識を破る画期的な素晴らしい理論も最初は無視〜馬鹿にされる運命にあるから、その全てが怪しいものではないけれど、本物となるのは稀である。鈴木式もその基本理論は基本的なところでミスがあったと私は思いました。しかし、彼女の著作からのその理論にかける情熱は感じられましたし、若い頃は実践学問に向けて真面目で優秀であったのであると思いました。

 
ただ、もし、その基本理論に誤りがあったら、彼女の一連の指導が全く意味がないのかというと、それはまたそうとも限らないと思います。ちなみに、逆の方が多い。つまり、最先端の理論を自分の実践に無理やり我田引水して、世間を騒がしているパターン。その例は「脳内革命」や「免疫革命」とかいう本でしょう。こういういい加減な本に比べたら、鈴木その子の著作の方が、ずっと評価できると私は思います。

 
若い時は判りませんでしたが、今読み返してみると、この本の中には、為になるところが数多くありました。彼女の実際の指導も「どんどん食べよう」という単純な話でもなく、タイトルが過激過ぎるのでしょう。とにかく、彼女は批判精神が旺盛です。例えば、食品成分表での指導について、消化吸収の個人差は千差万別なのに、一律に摂取カロリーを設定するのはおかしいという、重要なことを指摘しています。代謝機能にも個人差があることも指摘しています。その他、牛乳を無批判に中年以降の人間が多飲すること、豆乳神話しかり、植物油しかり、玄米食への過信、核酸食は老化防止によい、ビタミンへの過剰依存、漢方薬への信仰、などを論理的に批判しています。彼女は専門家としてきっちり書いています。私も同感ですが、実はこういう意見は多いのです。宣伝しないだけ。

 
しかし、「鈴木式を実践した人はみな例外なく、なんら苦しい思いをすることなく、減量に成功しています」とも書いています。これは、「うまくいかなかった人はちゃんと実践しなかった」と烙印されるということです。大概の宗教やイデオロギー集団が常用するのと同じ論理です。そういう訳で、この本の記述レベルの落差が大きいように思います。

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