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Doctor Mからのメッセージ#059                     (2006.7)
     知人や身内に対しても的確な医療アドバスは診察なしでは難しい

 遠方の昔から親しい友人から「僕の親父が○○病院に入院したけど、主治医がどうも頼りないから心配や」というような電話相談が時々ありました。友人の話からは病状の説明も不十分で不適切に思っているようです。
私は、いくら友人から父親の病状を聞いても、自分でどうこうアドバイスするのは難しいです。イレウスとだけでは状況が不明だし、肺癌という病名だけでは方針は判らない。やはり、その時点で診療している主治医が一番データーを持っているのです。普通に求めてもちゃんと病状の説明をしてくれないのなら問題外ですが、友人の方もちゃんと先入観なしに説明を聞く機会を得ているのかが知りたいところです。

 友人は誰かのアドバイスでその中小病院に入院させたが、本当は悪くない病院かも知れないのに、のっけから信頼を持たない気持ちで病院に連れていっているようです。主治医もそれを感じてなんとなくよそよそしくなる可能性があります。以心伝心だから、これはあると思います。しかし、信頼できない状態になったのなら、早く転院した方が良い。不都合なことが起こる可能性が増えてきます。あるいは、その主治医は単に人間関係に大雑把なのかも知れない。私はいつもこうアドバイスしています。「一度は今の病名や病状と見通しをきっちり聞くこと。それで納得しなかったら他院に代わること。その場合でも普通なら紹介状を書いてくれます」と。とにかく、一度は面談(低姿勢でも高姿勢でもなく)を要求する姿勢が患者サイドにも必要だし有益でしょう。
最近では、医療制度として、入院時に「入院計画書」という書類を医療機関が発行するようになり、患者さんが納得する(あるいは、納得しない)機会が得られます。


 兄が「急に血尿がでて、びっくりしている」との電話をしてきたことがありました。兄は距離的に便利な地域の中小の私立病院に行くことに決めました。私は基幹病院的な方が良いのではないかと思いましたが、反対しませんでした。経過を聞いて、またアドバイスをすれば良いと思ったからです。もし、診断に長引いたり、ガンなどの重病であると判れば、その病院の先生にその時点で「治療は○○病院で受けたいと思います」と普通に言えば、必ず紹介状を書いてくれるからです。兄のこの場合は、諸検査の結果、原因不明の一過性の血尿だったようで、その病院で終わったので、結果的に正解でした。

 外来で、かかりつけ医または主治医として診療させて頂いている経過中に、今の治療に不都合をきたすようなことを近所の人からアドバイスされて、主治医の「知らない間に」実行していたという話は枚挙にいとまがありません。具体的には、別の医者にかかること、こういう検査を受けてみること、自分の愛用している薬やサプリメントを勧めること、などです。「知らない間に」というのが重要です。気が動く話なら、気軽に主治医に意見を聞くのが良いと思います。「先に聞いても、どうせこの先生は反対する感じだもの」と言われれば、思い当たる節もあると白状せざるを得ません。
主治医のアドバイスと反対のことをするのなら、主治医を変更しましょう。しかし、「いやいや、先生を信頼していないのではないのです。友人の話には気持ちが動いたので」という話も多い。別の医者にかかるというのも、今の治療に不信があるのなら仕方がないが、実は本人にはそんなに不満はないのに、友人が「あの先生に診てもらいなさいよ」とお節介することが多いようです。しかし、時には正解となることがあるのは事実なのです。
ただ、上記のように、医師であっても、直接診察しないと、責任あるアドバイスは出来ないことが多いので、無責任な知人のアドバイスには首を傾げたくなることが多い。

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