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Doctor Mからのメッセージ#058                     (2006.7)
        体位の選択が薬物以上に病状を改善する場合がある

 病気や体調の悪い時にどういう姿勢や体位をとるのが良いのか。たとえ確固たる知識がなくても、自分の症状が改善する姿勢を探すようにいろいろトライしたらよいのですが、そういう工夫をしていない人が結構います。以下に、参考意見を書きますが、やはり最終的には本人の症状などが改善する場合が、その時には、正解だと思います。

 ショック状態の時はとにかく臥床・・・血圧が急に下がり過ぎた時は、意識もはっきりしなくなってきます。兎に角、頭位を水平にして下肢を挙上して、脳の血流を維持したり心臓への血流還流を維持するようにします。採血や注射の時に、或いは排便排尿の際などに、自律神経反射で脈が遅くなり血圧もストンと下がることが時々あります。有効な薬もありますが、それよりも直ぐに臥床させるのが正解で、大抵は救急薬品を用いる前に改善します。自宅で意識がなくなった場合でも、先ずは寝かせることです。

 心不全・呼吸不全・咳発作の場合はファーラー位(上半身を斜めに挙げる)〜完全な座位のことも・・・ゼーゼーいって息苦しくなった時は、心不全か呼吸障害です。呼吸障害でよくあるものは喘息発作ですが、肺炎、その他による肺うっ血もあります。肺うっ血状態では肺が充血してガス交換障害が起こり、原疾患との悪循環に陥ります。心不全も左心機能の障害が度を超すと肺うっ血になります。肺炎・気管支炎・喘息(これもある種の気管支炎です)などの状態では、大抵は気管支や肺の血流を減らしてやると状態が良くなります。喩えの話をしましょう。指に切り傷を受けるとズキズキ疼きますが、指を挙げておくとズキズキは減ります。足関節にひどい捻挫をしても、下肢を挙上しておくと腫れも痛みも軽減します。これと同じで、急性期には患部の血流を減らすことが症状を軽減するのです。咳発作も同じで、気管支などの血流を減らすことにより症状はかなり減ります。喘息や咳のひどい場合は「とても寝ていられないから、苦しくて座って凌いだ」というのを聞きますが、楽になるのが正解です。重要なのは、「本当はちゃんと横になっていた方が良いのだろうが、仕方なしに座っていた」というのは間違いです。水平臥床が常に体に良いというのは勘違いなのです。風邪を引いて夜間の咳で困っている人ならファーラー位になるだけの方が、鎮咳剤を服用してはみたが水平に寝たままというよりよっぽど良い場合もあると思います。

 眩暈(めまい)の時は眩暈を誘発する頭位を避ける・・・もっともありふれた眩暈は耳の奥の内耳の機能障害(前庭機能障害)です。私は、脳障害を疑うような随伴症状もなく、特に以前から繰り返し生じるような場合は(ほとんどがこれです)、ご本人のご希望が別になければ、通常は頭部のCTや耳鼻科や神経内科への紹介はせずに、薬物投与してフォローしています。私どもの扱う多くの眩暈は内耳の機能障害で、循環障害ないし自律神経障害という受け取り方が適当な場合が多いものです。顔を左に向けると眩暈がひどくなるとか、臥床や座位では良いのに起床の際に眩暈が出るとかのことが多い。薬を利用することに加えて、その誘発頭位を避けるようにするのが良いでしょう。しかし、聴力障害も加わっている場合は直ぐに耳鼻科に紹介します。突発性難聴というステロイドの治療が遅れると聴力の回復が望めない場合があるからです。また眩暈だけでも経過中に当院でCTをチェックしたり他科受診を勧めることは状況によりあります。

 頚腕症候群も就寝する姿勢をファーラー位にしたり、肩や頚部にクッションを上手に使う試行錯誤を・・・就寝は悪い姿勢(痛い)への防御反応がないのも悪化の機会です。

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