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Doctor Mからのメッセージ#057                     (2006.1)
        インチキ民間療法の最近の報道についての私見

 昨年10月6日の熊日新聞の報道によると、「アガリクスが癌に効く」と虚偽に宣伝して販売した「ミサワ化学」の社長が逮捕され、宣伝書籍を書いたフリーライターと監修した某大学名誉教授が書類送検され、出版会社の社長も送検になるらしい。ライターは架空の体験談を執筆しているし、名誉教授は実力も信用も当てにならないし、私がDMMの中で指摘した通りの話でした(DMM#45:癌の代替療法商法は興味深い、DMM#26:イメージ先行の宣伝文句には先ず疑うことから)。多くの健康食品も全く同じ状況です。つまり、それを安易に信用する人は端的に言えば愚かなのです。インチキ商売で一儲けしようとする側の人達はそれについては真剣そのものですから、信じさせて餌に飛びつかせるように熟考して努力しているのです。その立案力と行動力には敬意を表すべきです。直ぐにとか何度も引っかかる側の人は「物事の道理が判っていない」に尽きますが、マスコミがこれらの人たちを「お馬鹿」とは言わず、「被害者」とのみ言うのが事件の減らない一因であると、マスコミ報道の安易さと意識レベルの低さを揶揄したくなる。

 この「ミサワ化学」だけが突出して悪質なのでしょうか? これは氷山の一角で、今回摘発を受けなかった物凄く数多いこの種の民間物質もほとんど同じであると思うべきでしょう。警察の方もこういう事案の取締りばかりやっておられないので、たまたま「ミサワ化学」が何かの成り行きで摘発ということになったということでしょう。

 今年1月19日のTV報道によると、インスリン注射を毎日数回しないと生命を維持できない(T型糖尿病)中学一年生の女の子の親がインチキ民間療法の会を信じた結果、療法の最中にインスリンを投与しなかったので、3日目に死んでしまった事例があり、その両親が会に損害賠償を求めて訴えた。事件は昨年の7月。会は「次世代ファーム研究所」で光合堀菌という菌で治療すると何にでも効くと宣伝しているらしい。親が知人の紹介で入会したらしい。会の代表は「インスリンを注射していることは知らなかった。言ってくれたらよかったのに」、親は「そのことは数回言ってあるから知っていたはずだ」と主張していた。

 限られた情報の中からの小生の判断は、会は詐欺的犯罪を犯しているが、親の方が重大な過失を犯している。会の方からすると、自分の療法により少なくとも死ぬとの予測はなかったと思われる。インスリン注射のことは、@聞かなかった、A聞いたかも知れないが、そもそもT型糖尿病のリスクについての医学知識(注射を続けないと数日以内に重篤))を明確に知ってはいなかった、Bその他、が考えられる。一方、親の方はというと、T型糖尿病のリスクについての医学知識については、主治医から明確に教えてもらっていたはずです。親と会の話がどういう調子で運んだにせよ、インスリンを止める判断は親がしたというべきではないでしょうか。損害賠償を求めるということには何かしら違和感を覚えてしまう。会については無責任極まりなしであり、損害賠償云々ではなく刑事告発(詐欺、医師法違反)がなされるでしょう。しかし、これも、この会だけが突出して悪いのかと言うとそうではなく、こういう無責任な民間療法やサプリメントや栄養食品は多くは似たり寄ったりです。小生は、そのどれもについて同じ程度に「怪しからん」と思っています。この会からすると、「この親のような人が来なかったら、今後もインチキ療法を他と同じく続けられたのに」と不運?を嘆いているかも知れません。

 このメッセージの読者の皆さんはさすがに自分はそこまでは信じないと思うでしょうが、どうでしょうか? この事例では、「知り合いが勧めたので話に乗った」「その薬や療法はいろんなものに効く」「主治医に相談せずに勝手に療法を始めたり、時には主治医の治療を中断している」などがキーワードですが、あなたの周りの話とピッタリでしょう。特別な話ではないと思います。医師の管理が不可欠であるT型糖尿病だったことが不運でした。

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