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Doctor Mからのメッセージ#045                     (2005.1)
                   癌の代替療法商法は興味深い

 癌の代替療法商法は毛生え薬の通信販売以上に興味深い点があります。宣伝には効果を証明する症例の体験談や、しばしば写真データーも載せられていることが多い。ここに小生の考えた分類があります。販売会社Aと体験者Bの実態を想定すると、@AもBも怪しくて商売のみでやっている場合、AAは商売のみだが、Bは信じている場合、BAは真面目だがBが商売だけの場合、CAもBも真面目に効果を信じている場合の4通りが考えられますが、Bの場合は考えにくいので、現実には@ACがあり得ると思われます。@の場合は、Bというのも実はAとグルというもので、充分ありうることです。Aの場合はBはたまたま運良く効果があったか、タイミングよく効果があったかに見えたかのどちらかで、やはりあり得ることです。Cも充分あり得ると思います。この場合も、本当に効果がある場合もありますが、本当は効果がそれ程確実ではないのに実際以上に効果があるように思ってしまっている場合もあります。

 分類Cの場合で本当は効果がなかったというのが、ある意味では一番罪深いことであると思います。さて、癌の代替療法(癌の予防食品も似たり寄ったりの状況ですが)における分類@やAの場合は、商売としては非常に優れていると思います。何故かと言いますと、何しろ癌であるので、高価な商品でも売れるし、効果がなかったと言って訴える者はいないであろう、の二点です。癌の末期で用いる場合など、もともと藁をも縋る状況であるので、効かなかったといって怒る者はまずいない。世は不景気だし、健康や病気に異常に関心が高い状況だし、こういうのに打って出るというのは商売上は「なかなかのものだ」と思うものです。これに比べれば、毛生え薬の方が分が悪い。癌商品ほどの価格は付けにくい上に、やれ「頭皮がかぶれたぞ」とか、やれ「僅かに残っていた毛髪まで抜けたではないか」とかで、訴えられる可能性は多少あると思われます。「毛が生えてこないぞ」と本命のことで訴えられる可能性もあります。

 さらに考えますと、「医者から、余命8ヶ月と言われたが、これを飲んで1年も生きた。4か月分の延命効果があった」という話を実によく聞きます。そもそも余命何ヶ月というのを疑いもなく信じるのが小生には不思議です。実は確実なことは判らないことが多いのです。小生は肺癌を扱う医師として、ご家族から「あと何ヶ月の命か?」という質問を数多く受ける立場にいました。小生のお答えは「あと半年位かも知れない覚悟はしていて下さい。しかし、実は数ヶ月で急に悪くなることもあるし、1年以上このままという場合もなくはないのです」というのが多かったと思います。

 多くの医師は半年位かなと思っても、「まあ、4ヶ月くらいでしょうか」と、意識的か無意識的かは別にして、短めに答える習性があります。そうすると、実際に長めに外れることが当然多くなるので、その場合に代替療法をしていると、その期間の差が療法の効果と信じられてしまいます。ということで、代替療法の信じる根拠の少なくとも一部は、元はと言えば主治医の「いい加減な余命宣告」にあると思います。

 ただ、もし、主治医が長めに宣告した場合を想定しますと、「1年と言われたのに半年しかもたなかった」と恨まれたり信用をなくしたりする可能性があります。さらに、ご本人もご家族もまだまだ大丈夫と思っていたから生前にすべきことを先送りにしていたので、予想より早く死亡されて困る場合もあります。遺産分配や会社経営の引継ぎも呑気にし過ぎていたとか、最後の旅行を先延ばしにしていたとか。だから、どうしても余命を短めに言っておく方が親切という風になってしまうのでしょう。

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