直線上に配置

Doctor Mからのメッセージ#028                     (2003.10)
                血圧測定や血圧管理についての蛇足

 頭を捻ってこのDMM を書いていますと、「ありゃ、これはどうだったのか」「あれ、こういうこともあるしなあ」というように、どんどん書き足らない物事が出てきますこの号は20号と21号の補足です。拡張期血圧(下の血圧、DBP)について。そういえば、昔は収縮期血圧(上の血圧、SBP)の高いのは余り心配ないが、特に下の血圧の高いのが動脈硬化に悪いということが言われていたような記憶があります。何故そういう結論になっていたか。勉強不足で正確には判らないですが、おそらく、最初の頃の大規模臨床研究の際に取っていたデーターを、何らかの理由で初めからDBPに絞っていたからではないかと思います。つまり、SBPのデーターを充分に取っていなかったと思います。最近までの多くのデーターでSBPはDBPに劣らず重要だということです。具体的な血圧管理の目安は21号に書いたとおりです。

 血圧測定の結果、「はい、13540です」と答えますと、DBPが低過ぎて患者さんが不審や不安になられる事態に遭遇します。これについてコメントします。20号でも述べましたが、血圧計での測定はあくまでも測定値ですので、本当の血圧とは違うことがあります。先ず、DPBはSBPに比較して判断しにくいことがあり、被検者によっては本当に判りにくいことがありますので、真の値が決定できないことがあろうかと思います。ただし、多くの方ではDBPもしっかり判ります。実際に測定上でははっきりとDBP=ゼロという場合もあります。つまりマンシェットが締まっていなかってもドッドッという音が聞こえる場合です。DBPの値が実際より低めに出てしまうことはあっても、間違って高くデーターが出る可能性はあまりないと思います。

 しかし、先の号に書きましたようにDBPの基準上限値(拡張期高血圧)の目安はありますが、基準下限値などはないのです。SBPの方は基準上限値(収縮期高血圧)も基準下限値(低血圧)もあります。DBP(つまり、下の方の血圧値)の測定値が低く過ぎて問題になることは、一応ないと考えて頂いて良いと思います。


 最近、専門医の指導であるはずの医師会のパンフレットに、「一日一回、早朝に自己血圧を測定しましょう」というのがあって、びっくりしました。要するに、早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞の発作のキッカケになるので、問題だということです。それは良いのですが、血圧の測定が朝だけで良いなどとはナンセンスも良いところです。早朝高血圧は発作のキッカケに重要かも知れませんが、そもそも、動脈硬化が進むのは朝の高血圧のみが原因ではなくて、1日のうちで高血圧の時間が長くその程度が大きければ、その積み重ねで(いわば積分値)、動脈硬化が進み、その挙句に心筋梗塞や脳卒中が起こり易くなるのでした。血圧の変動は個人によって個性があり、各自で自分のパターンを知っておく必要があります。私は先ず、いろんな時刻の血圧を測定して自分のパターンを知り、その後で自分の測る時刻を選んだら良いと思います。それなりに落ち着いていたら、別に毎日測定しないでも良いと思います。今日はこの時刻、今は暇だからあの時刻とかも悪くないし、測定しない日があっても良いと思います。ただし、変動の大きい時とか、どうも血圧が高そうな症状や、低そうな症状がある時は、測るべきでしょう。また、たまには一日に何度も測定する日を作ると、自分のことが自分で良く判って好いのではありませんか? 測定したデーターは血圧ノートに記録して、受診毎に主治医に見せると、効率のよい診療を受けられます。

←Back                                                                 Next→
直線上に配置