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Doctor Mからのメッセージ#026                     (2003.4)
             イメージ先行の宣伝文句には先ず疑うことから

 アルカリ食品: 一世紀も前の大昔にドイツの学者が食品をアルカリ食品や酸性食品などに分類したとのことです。食品を焼いて残った灰のPHを測定して分類したのです。人間の体で代謝される実態とは全然異なる乱暴な分類です。そもそも人間の動脈血のPHは7.40辺り(これを中性と思って下さい)の狭い範囲に調節されており、余り変動させないための調節機構が備わっています。食品の一寸した摂取によって血液をアルカリにするなど実態のないことです。特に細胞レベルではアルカリに傾いた環境は酸に傾いた環境以上に毒です。研究室では細胞培養で環境がアルカリにならないように炭酸ガスを常に補給している程です。分類上で肉が酸性で植物がアルカリ性だというのが、この分類の信用を惹き付ける所以と思われます。しかし、肉ばかり食べると余り良くないと言えば済むことで、アルカリとか酸とか言うことはないのです。

 天然は良い、植物は優しい: 出鱈目が直ぐに判ります。毒キノコは天然で植物ですね。これで仕舞いです。劇薬の多くはもともと植物由来です。ケシ、トリカブト。動物にもフグや蛇の毒があり、挙げるのも阿呆らしいです。多くの西洋式の医薬品は植物の薬理物質を研究して、物質を同定して、そして毒にならないような形や量を工夫して世に出してきました。兎に角、自然はいつも優しいということはありません。


 血液がドロドロ、ネバネバ: いずれも表現が過激ですねえ。サラサラと対をなしています。前者は濁っている感じ、後者は「粘性」のようです。実際は、コレステロールの高いのを指している場合もあるようです。「易凝血凝固性」つまり「血液の固まり易さ」のことを指している場合もあるようです。つまり、このうちの何を言っているかがそもそも曖昧です。例えば、コレステロールが高くて血栓が出来易くなるのは、血管内皮やマクロファージとかいう細胞とかを巻き込んだ複合的な反応によるようです。それを言いたいなら、単に「血液のコレステロールが高い」いのは恐ろしいとだけ言えば済むのです。兎に角、自分の意見を強調したり、健康食品を売ろうとするために、インパクトを与えるための表現ですが、性根が悪い表現と思います。

 なお、食生活様式によっては血液が固まり易くなることはやはりあるようです。欧米人は日本人に比べて手術中でも出血が止まり易く、外科医の苦労が少ないらしいです。欧米人をじっと臥床させておくと、しばしば下肢の静脈血栓症が生じて、それが肺に飛んでいって肺梗塞という危険な病気になることがあります。エコノミークラス症候群ですね。日本人にも次第に稀ではなくなってきているようですね。

 医学博士: テレビでも雑誌でも医学博士が出演して意見を言うと、それだけで本当だと信じるのも単純過ぎます。博士は限られた領域の研究で一応の基準に達したと認めたという制度です。中でも医学博士は多くの医師が研究の手ほどきを数年間だけ受けて取得するという粗製濫造で問題となっています。たとえ、まともな理学博士や医学博士であっても、おっちょこちょいな性格ではないとの保証をする称号ではありません。年齢を経て頭が変になることもあるかも知れませんが、博士号は一旦取得すると剥奪されませんし。テレビでも一見して怪しげな博士が多いと思いませんか? 同じく大学教授も人格者だとか宣伝はしないだとかの保証をする職ではありません。大変尊敬に値する方も当然多いのですが、非常識だけでなく頭まで悪そうな方もまた当然おられます。

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