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Doctor Mからのメッセージ#024                     (2003.4)
             マスクや手洗いはやっぱり意味があります

 最近は子供の時から除菌性の繊維や金属などを使用させようとする世情であるので、雑菌の洗礼を受けずに成長するために免疫力が弱くなって問題である、という尤もな意見が出てきています。ただし、実際にそうすることがどれ程免疫力が弱くなるかというのもまたそれ程実際のデーターが欠如していると思います。これもイメージが先行して、実際にはそれ程弱くならないのかも知れません。いずれにしても、もともと人間はバイ菌と共存して存続しているのであり、無菌にしようなどというのは無理な話です。それに、大腸には雑菌が多いのですが、抗生物質でこれらの雑菌を弱めすぎると、病原菌に都合の良い環境になったりして、かえって悪いようです。皮膚の雑菌も安定共存している間は良いのでしょう。流行性の感冒が特に流行っていなければ、普通の健康人なら「食事の前はなるだけ手を洗いましょう、うがいはした方が良いかな」くらいで良いでしょう。但し、調理の前の手洗いは非常に清潔さを求められます。直ぐに食べるのなら適当で良かっても、料理にばい菌が付着してから時間が経てば、菌が増えたり毒素が出たりして、食中毒を引き起こす可能性があるからです。

 梅毒スピロヘーター菌もエイズウイルスも一匹や十匹くらい皮膚や粘膜の傷から侵入しても病気にならないそうです。人間の受精の場合も、たとえ無精子症でなくても精子の数が少ないと、結局は不妊の形になります。動物実験の場合に、癌細胞をネズミに百個を植え込んでも排除されるが、十万個なら成長してネズミは癌死してしまうということは、その筋では良く知られた事実です(この個数は腫瘍によって差があります)。ついでに言いますと、エイズに汚染された注射針からエイズの発病は大有りだが、鍼治療の針からの発病は余りないだろうという主張を聞いたことがあります。注射針は中空ですからこの中に感染した血液が貯留しているが、鍼治療の針では表面にしか付着していないのでこれで皮膚を貫いても体内には十分量が入らないという意見です。だから消毒は不十分で良いということでは勿論ありませんが、ご参考まで。

 そこで本論ですが、空気によって伝播されるウイルス感染症に対して、普通のマスクをしても繊維の間からすり抜けてくるので意味がないという意見もあります。確かに、空気感染の因子についてはそういう点もあります。しかし、唾液や喀痰からの飛沫感染の因子を考えると、マスクにより体に入ってくる病原ウイルスの量が非常に減ることは間違いないと思えるし、要するに百パーセント阻止できなければダメだというのは上記の感染・発病の実態を無視しています。インフルエンザの流行期にマスクは一番意味がある対応と思います。家に帰ってからうがいするというのは粘膜に対して時間的に問題ありで(処置が遅過ぎる)、マスクをずっとしている方が良いように思います。同じように、手洗いの本質は殺菌サッキンではなくて、減菌ゲンキン(専門用語は滅菌メッキンなのですが)なのです。何遍も水洗するだけで容易に一万個の雑菌を百個あるいはそれ以下に減らすことが出来るでしょう。消毒液を用いなくても水だけでも物凄い効果があるのです。

 研究室での細胞培養では格段の無菌に近い状態が必要です。そうでないとシャーレに雑菌やカビが直ぐに生えて来て培養がダメになります。それ程でもないが、極めて厳重にする必要があるのが白血病患者への強力な化学療法中でしょう。それ程でもないが、充分な滅菌対策が必要なのが普通の癌患者に対する強力な化学療法中です。もっとそれ程でもないのが普通の病気中で、もっとそれ程でもないのが普通の人です。

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