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Doctor Mからのメッセージ#023                     (2003.4)
           降圧剤の種類は?

 血圧の高さ=血流の多さ×血管の抵抗でしょう。電圧電流×抵抗と同じです。血圧が高いのを減らそうとすると、その式からすれば、血流の流れを減らすか、血管の太さを緩めるかのどちらかしかないようです。降圧剤は実際にこのどちらかなのです。

 血流の流れを減らす降圧剤には、利尿降圧剤と交感神経抑制剤があります。利尿降圧剤は体液を尿から体外に出すことにより、心臓や血管の中の血液の量を減らすことによって血流の流れを減らして血圧を下げます。これと逆のことは沢山の食塩と水分を摂取することです。βブロッカー(β交感神経遮断剤)というのもこの種類のものです。これは心臓の筋肉の収縮の程度(ポンプ力)を減らすことによって血流の流れを減らして血圧を下げます。心拍数も落ちることが多いです。量が多すぎると心不全になります。一見矛盾するようですが、少量から始めての心不全治療薬にも用いられます。米国では合併症のない高血圧にはこれらの薬はが第一選択薬とされています。これらは薬価の廉い薬が多いです。糖代謝や脂質代謝には良くない影響があると言われますが、個人差もあります。欧米人と日本人では生活や体質が異なることもあり、また、考え方が異なることもあり、わが国では米国の方針をそのまま当てはめることはないとの考えもなる程そうかなと思いますが、尊重すべきでもあります。

 主に細動脈血管の太さを緩める降圧剤は、要するに血管拡張剤でして、多くの分類の降圧剤がこれになります。わが国で最も普及しているのはカルシウム拮抗剤といって、細動脈の筋肉の収縮性を抑制することにより血管を拡げます。同じカルシウム拮抗剤のなかでもいろんな種類があり、それぞれ癖があって状態によって使い分けすることになります。例えばカルシウム拮抗剤の中には心拍数を増やすものや減らすものやどちらでもないものなどいろいろあります。日本人の狭心症にはこのカルシウム拮抗剤が最も多く用いられるので(心臓の冠動脈を拡張させる)、こういうことと相まってもこの薬剤が日本では多く用いられています。α遮断剤(α交感神経遮断剤)も同様に血管拡張性です。これは細動脈に分布している血管を収縮するような種類の自律神経の働きを抑えることによって血管を拡げます。この薬剤は排尿障害や前立腺肥大症状の改善にも効果があります。また、糖代謝や脂質代謝に良い影響を与えるということが言われています。同じような血管拡張性の降圧剤には昇圧作用のあるアンギオテンシンUという物質の体内での合成を抑制するACE阻害剤や、アンギオテンシンUの作用を阻害するアンギオテンシン受容体拮抗剤(ARB)という薬剤があります。これらの薬剤はいずれも腎臓や心臓などの臓器機能の保護作用があると言われ注目されています。しかし、矛盾するようなのですが、既に腎臓の機能がある程度以上悪い人に使用すると腎機能が悪化する可能性があると言われて使いにくくなります。また、ACE阻害剤は副作用として咳や喉のイガイガ感が生じることがあるので有名です。これは女性の方に多いようです。ARBは最も新しい降圧剤で、ACE阻害剤と似ていますが、咳の副作用はないことになっています。血管拡張剤には他にも数種類の薬剤がありますが、それらは最近では余り用いられないと思います。

 
全ての人にどれが一番良いということは言えません。その人の血圧のパターンや、合併症の有無や、薬価やその他の条件によりどれかの1剤やいろんな組み合わせとして選択されます。

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