直線上に配置

Doctor Mからのメッセージ#034                      (2004.1)
             採血予定日は朝食抜きが常識というのは???です


 日常的な採血検査は普通は2本のチューブに採取されます。血球検査(赤血球、白血球、血小板)とそれ以外の血清の物質の検査の二つがあるからです。採血検査の結果報告データーには正常か異常かの参考のための基準値というのが書いてあります。これは多くの正常と思われる人々の統計データーを利用した、だいたいこれ位であろうという参考であって、検査値の最終的な評価は人間である医師の責務となります。なお、検査報告データーに書いてある基準値というのは通常は空腹時での基準値です。

 空腹時でも食後でも大雑把に言えば、大概の検査項目については、どっちでも良いのです。貧血の有無や白血球の数、肝臓とか腎臓のデーター、炎症の程度の値など、意味のある程は変らないと思われます。ただし、血糖中性脂肪トリグリセリドは別で、食後には健康人でも多少上昇しますし、問題のある方はかなり上昇します。総コレステロール値も中性脂肪値が影響を及ぼすので、食事が影響を及ぼすことになります。コレステロール値については中性脂肪値が高過ぎると、判断しにくい場合があります。中性脂肪が食後に非常に高くなる人は空腹時採血が良いように思います。だからといって、「空腹時に採血しておく方が無難だから空腹時採血が良い」という考えは、常に良いとも限りません。

 私は、診察の度に秩序のある生活様態を変えるのは良くないと思います。比較的健康な方ならどっちでも良いのですが、それでも医者に行く度に朝食抜きというのも、気の毒だと思います。そんな無理をしないで良いと思います。糖尿病のような方は尚更、医者に行く度に安定した食生活を乱すのは非常に悪いことだと思います。糖尿病の管理では、凡そ過去一ヶ月の血糖管理状態の判断が出来るヘモグロビンA1(エーワンシー) という指標を中心に判断しています。来院時の血糖値や尿検査データーは、あくまでも有意義な参考値です。具体的に言いますと、主治医としては、例えば「朝食後何がしか時間後の血糖値はこれ位なのだなあ」というのはそれだけで判断に役立っています。私の場合は、たまに患者さんに「次は、朝の9時ごろに空腹で受診して下さい」とか「次は、夕方の血糖値を知りたい」とかお願いすることがあります。やはり、状況によってはそういう値を知りたいことがあるのです。しかし、常は生活の流れの中で受診して頂きたいし、それで充分だと思います。なお、「空腹時血糖値」というのは、「単に朝から何も食べていない場合の血糖値」ではありません。意味のある「空腹時血糖値」は起床後比較的直ぐの状態の「血糖値」なのです。朝食抜きで昼前頃に来院して、基準値よりかなり高くてがっかりする人がいますが、朝食を摂っていなかっても、活動しているうちに、肝臓のグリコーゲンからブドウ糖が血中に放出されているので話は単純でなくなっているのです。そんな中途半端な受診をされることはないのです。胃カメラの前の朝食抜きの話ならそれで良いのですが。

 
糖尿病の診断確定のためにブドウ糖負荷試験(OGTT)をする場合は、だから、可及的に朝早く朝食抜きで来ないといけません。余談ですが、少なくとも糖尿病と判っている患者さんには、特定の理由がない限りこの検査を繰り返すのは悪いことです。何しろ、ブドウ糖75gを、すなわち300Kcal も一気飲みするのですから最悪です。

←Back                                                                 Next→
直線上に配置