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Doctor Mからのメッセージ#007                      (2001.3)
        糖尿病の治療では薬は食事運動療法の代用にはなり難い


 現在、日本の糖尿病患者数は700万人以上、予備軍を加えると1400万人と言われています。長年高血糖を是正しないと種々の合併症や動脈硬化の進展を来たすことになります。網膜症による失明は年間5000人,成人における失明の原因の第1位であり、腎症によって毎年7000人が新たに人工透析導入されており、やはり透析の原疾患の第1位になったのではないかと思われます。また神経障害による異常知覚や自律神経障害で長年苦しむことが多いようです。日本人の大多数はある程度インスリン分泌の保たれているU型糖尿病(インスリン非依存性)ですが、これについて述べてみます。

 同じ動脈硬化の危険因子である高脂血症や高血圧症自体のコントロールは、例え生活改善が不十分でも多くは薬物療法で可能であります。しかし、糖尿病は現在のところこれが難しい。生活療法つまり運動療法と食事療法に依存する比重が非常に大きいのです。しかし,軽症の場合は適当な生活でも或いは適量の薬剤使用で上手くいくこともあり、その場合はその生活でよろしいということだと思います。

 糖尿病の実体は膵臓からのインスリンの分泌が不十分であることと、インスリンの信号を受ける側の肝臓や筋肉を含む諸細胞のその信号を受ける構造(レセプター)が減少したり鈍感になること(インスリン抵抗性の増大または感受性の低下)とが悪循環を招く傾向にあることです。そもそもインスリンは各細胞が血中のブドウ糖(身体の燃料、石炭と同じ)を燃やしてエネルギーとして利用する際に必要なホルモンです。糖尿病では各細胞がエネルギー不足になるというのも大変問題ですが、利用されない血糖が血中にあふれる(高血糖)ことも問題で、これらが複合的に合併症を引き起こします。

 現在の薬物の主なものはインスリン不足を改善するものです。インスリンを直接補給する注射薬と膵臓のインスリン分泌を刺激する内服薬(血糖降下剤)の2つです。しかし高血糖が続くと、インスリン抵抗性も増大して来て、血液に十分濃度または高濃度のインスリンがあるようになっても高血糖が改善されないことが多いのです。しかも、インスリンの高過ぎる状況が続くとこれがまた心血管障害の危険因子になるようです。

 さて、血糖コントロールが上手くいっていない場合についての結論です。この厄介なインスリン抵抗性を改善するのに運動療法は大変重要と思ってほしいです。運動療法は単にカロリー摂取過多を帳消しにするだけではないということです。一方、適正なカロリー制限も勿論非常に重要です。つまり、両方ともとても大事なのです。

 一方、膵臓からのインスリン分泌が血糖降下剤を用いても十分得られない時はインスリン注射の適用となります。なお、しばらく注射して膵臓を休憩させると、その後インスリン注射を止めても膵臓からのインスリン分泌が回復してくることが時々あります。一生インスリンを続けるとは限りません。この場合は悪循環を一旦断つということが早く良好な状態に戻す契機になるのです。一生インスリン注射が望ましい場合も多いのですが。


 私は糖尿病の管理には特に力を入れていますが、目処が立たないのに今までのパターン(効果が乏しくなった生活や薬剤)を変えようとしない方には良い手がありません。

 最後に、糖尿病と診断された人でも血糖の良い管理が維持できれば、糖尿病でない人と何ら変わらない人生が送れます。ただ、管理の維持にご苦労が多いとお察しします。

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