０１０　インチキ民間療法の最近の２報道についての私見（０６．０１）

○昨年１０月６日の熊日新聞の報道によると、「アガリクスが癌に効く」と虚偽に宣伝して販売した「ミサワ化学」の社長が逮捕され、宣伝書籍を書いたフリーライターと監修した某大学名誉教授が書類送検され、出版会社の社長も送検になるらしい。ライターは架空の体験談を執筆しているし、名誉教授は実力も信用も当てにならないし、私がＤＭＭの中で指摘した通りの話でした（ＤＭＭ＃４５：癌の代替療法商法は興味深い、ＤＭＭ＃２６：イメージ先行の宣伝文句には先ず疑うことから）。多くの健康食品も全く同じ状況です。つまり、それを安易に信用する人は端的に言えば愚かなのです。端的過ぎて失礼でしたら、想像力が少し足らないにしましょう。インチキ商売で一儲けしようとする側の人達はそれについては真剣ビジネスですから、信じさせて餌に飛びつかせるように熟考して努力しているのです。その努力と見事な行動力には敬意を表すべきです。その努力に思いをはせたことがありますか？ある種ですが、賢いし立派とも言えると私は思います。直ぐにとか何度も引っかかる側の人はやはり端的に言うと「甘い」し、「物事の道理が判っていないし」、「世間に疎い」、・・・。

この「ミサワ化学」だけが突出して悪質なのでしょうか？　これは氷山の一角で、今回摘発を受けなかった物凄く数多いこの種の民間物質もほとんど同じであると思うべきでしょう。警察の方もこういう事案の取締りばかりやっておられないので、たまたま「ミサワ化学」が何かの成り行きで摘発ということになったということでしょう。

○今年１月１９日のTV報道によると、インスリン注射を毎日数回しないと生命を維持できない（�T型糖尿病）中学一年生の女の子の親がインチキ民間療法の会を信じた結果、療法の最中にインスリンを投与しなかったので、３日目に死んでしまった事例があり、その両親が会に損害賠償を求めて訴えた。事件は昨年の７月。会は「次世代ファーム研究所」で光合堀菌という菌で治療すると何にでも効くと宣伝しているらしい。親が知人の紹介で入会したらしい。会の代表は「インスリンを注射していることは知らなかった。言ってくれたらよかったのに」、親は「そのことは数回言ってあるから知っていたはずだ」と主張していた。

小生の判断は、会は詐欺的犯罪を犯しているが、親の方が決定的な重大過失を犯している。会の方では、自分の療法により少なくとも死ぬとの予測はなかったと思われる。インスリン注射のことは、�@聞かなかった、�A聞いたかも知れないが、そもそも�T型糖尿病のリスクについての医学知識（注射を続けないと数日程で死ぬ）をちゃんと認識していなかった、�Bその他、が考えられる。一方、親の方はというと、�T型糖尿病のリスクについての医学知識については、主治医から明確に教えてもらっていたことは間違いない。親と会の話がどういう調子で運んだにせよ、インスリンを止める判断は親がしたというべきであって、素人である自分の判断力を何故過信するのか聞いてみたい程だ。損害賠償を求めるということには何かしら違和感を覚えてしまう。会については無責任極まりないことは明らかであり、損害賠償云々ではなく刑事告発（詐欺、医師法違反）が必要なのではないのか？　しかし、これも、この会だけが突出して悪いのかと言うとそうではなく、こういう無責任な民間療法やサプリメントや栄養食品は多くは似たり寄ったりです。小生は、そのどれもについて同じ程度に「怪しからん」と思っています。この事例はたまたま医師の管理が不可欠である�T型糖尿病だったことが最悪でした。この会からすると、「この親のような人が来なかったら、今後もインチキ療法を他と同じく続けられたのに」と不運？を嘆いているかも知れません。

読者の皆さんは自分はそこまでは信じないと思うでしょうが、どうでしょうか？　この事例では、「知り合いが勧めたので話に乗った」「その薬や療法はいろんなものに効く」「主治医に相談せずに勝手に療法を始めたり、時には主治医の治療を中断している」などがキーワードですが、あなたの周りの話とピッタリでしょう。特別な話ではないと思います。