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Doctor Mからのメッセージ#019                     (2002.10)
             歩行(ウォーキング)についての雑記


 良い姿勢で歩行することは健康対策ないし老化防止の基本です。筋力は適度の運動をする(適度の負荷をかける)と維持ないし多少の強化を得られますが、過度の運動は筋肉や関節を障害するし、運動しなさ過ぎると筋力は低下するという3原則は有名です。私達若くない者は、内在的な老化によりただでさえ筋肉も衰えてきますが、身体活動が減ってきますので3原則の点からもどんどん筋力が低下し勝ちです。

 人間の体はしばしば悪循環と良循環という成り行きが非常に重要です。筋力が落ちると今まで出来ていた運動でも疲れ易くなったり筋肉や関節が痛くなったりして出来なくなり、ますます筋力低下になります。もうひとつは姿勢のことです。姿勢と筋力とは表裏一体です。良い姿勢はバランスのよい筋力の裏打ちがあるのです。筋力が落ちると姿勢が悪くなり、姿勢が悪くなると筋肉が疲れやすくなります。ともに悪循環であり、どこかで断ち切らないと機能低下と老化が進み、常に疲れやすいとか関節が痛いとかで、やりたい活動も控えざるを得なくなり生活も面白くなくなってきます。

 歩行を考えますと、どうせ歩くのなら気候の良い時に景色の悪くないところで清々しい気持ちでしたいものです。しかし私はそれに敢えて異議を唱えたい。歩行は良い生活をするための保険であるのですから、初めから快適にというのは認識不足ではないでしょうか。「夏は暑いから散歩しなかった」とかの話が多いです。最近私は気付いて「家の中ですればいいのではないですか」とよく勧めています。壁に両手をついて足踏みをすればよろしいです。体の壁に預ける角度・膝を持ち上げる角度・リズムの速さの3点で自分にふさわしいと思う筋肉への負荷が調節できます。このことは当院入院中の患者さんに対する[歩行器]による筋力リハビリの成果の上に立っています。テレビを見ながら、「次のCMが出るまで続けよう」とやると心理的にも容易でしょう。

 こうした認識と強い心構えの上で、次に気分良く散歩する算段を考えるとよいと思います。やはり、天候の良い時に良い環境で歩きたいですね。歩かない日は体調がスッキリしないとなってくるとしめたものです。大事なのはなるだけ良い姿勢を心掛けることです。悪い姿勢での運動は悪循環を固定する要素があるのを恐れます。

 「有酸素運動を30分とか1時間とかしないダメ」というのは無視しましょう。あれは体内の余剰脂肪を燃やすという意味の話(それも15分でも意味があるという意見が最近は多い)です。糖代謝や脂質代謝の改善の目的の際の生活改善プランの話です。筋肉機能維持の点からは10分だけの運動でもゼロと比べると実に結構なことです。疲れたらその都度止めてまたすれば良いのです。家の中での運動は「すぐに出来てすぐに止められる」ので優れていると思います。

 仕事が実質的に十分な運動になっている方はこの忙しいのにわざわざ時間を取って散歩などする必要はないでしょう。しかし、仕事を疲れる程やっているというのは運動になっているかどうか判りません。デパートの売り場で丸1日「立ち仕事」をすると、非常に疲労感があるでしょうが、運動という点では余りやっていません。むしろ、帰宅してから僅かに10分でも歩行かランニングするのが体調改善にも良いと思います。

 
膝が痛い人は側面に補強線の入った装具をはめて歩行すると、案外早く悪循環から良循環に転換してくるかも知れません。肥満の方は絶対にカロリー制限も。

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