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Doctor Mからのメッセージ#009                      (2002.7)
                     糖尿病でない方も読んで下さい


 大部分の「普通の糖尿病」についてですが、そのコントロールが上手くいっていない時は、生活改善をしないと、医者の処方する薬だけでは充分良い結果が出ません。薬剤の効果が大きい高血圧、高脂血症、高尿酸血症などと違って、薬で「無理やりでも」データーを改善することが難しい。逆に、生活改善でびっくりするような改善が短期間に得られることがよくあります。生活改善とは具体的には、カロリー制限と適度の運動の2本柱であることは周知のことです。カロリーについての自験例です。

 70歳女性。他院で糖尿病の治療中(血糖降下剤内服)に片目が外上方に向いて動かなくなった。これは糖尿病による神経障害で、眼を動かす筋肉に麻痺が生じたものです。インスリンの適応かどうかということもあり、入院施設のある当院に紹介があった。糖尿病の管理の指標(ヘモグロビンA1c)も最近は悪化していた。そこで、直ぐ入院して頂き、翌日から先ず薬を一旦止めて血糖の日内変動を測定してから、治療内容を考えていこうと思ったのです。ところが、外来では高かった血糖値は入院直後から正常でした。しかも、入院中の食事は家のそれよりカロリーが多いとのこと。

 そこで、本人に聞き取りをすると、テレビを見て果物が身体に良いと沢山食べ出し、赤ワインが動脈硬化に良いと摂り始めた。入院して仕方なく中断となったと。直ぐに薬なしで退院しました。その後、眼の障害は治ったが、これは運が良かっただけ。

 赤ワインだけでなく黒酢に黒砂糖とかヨーグルトに蜂蜜とか、牛乳をどんどん飲めとか、その他似たような話が、懲りもせずに出てきます。それはどういう人に意味があるのか?何に効くのか?どの位効くのか?本当に効くのか不明です。いくら肩書きの立派な博士が言っても信用に足りません。多くは無責任な自己主張か商売です。はっきりしていることは、財布が軽くなることと、糖尿が悪くなることです。赤ワインだってまだ個々の日本人に良いという証拠などどこを探してもない。面白いことにドイツの研究者から、ドイツの白ワインがフランスの赤ワインより動脈硬化に良いという研究データーが発表されているのを見ましたぞ。研究室内での研究データーと実際の人間に有意差のある影響を与えるかどうかとには幾重にもの大きな隔たりがあります。

 今日は糖尿病の話しでしたが、高血圧や高脂血症の話しも似たようなことです。「み○も○た」の番組はバラエティーとわきまえることです。大抵は耳糞ほどの変化をもって人間個体全体に良いとか悪いとかの影響があるなどとよく言えたものです。多くは量的な意味付けが全く出鱈目です。「ストーリは面白いなあ」ということで、自分がしようと思っては大体が間違いです。いつもの普通の美味しい家庭料理を食べてきて、日本は平均寿命世界1になっているではありませんか。欲深すぎると火傷を負うと思った方がよいでしょう。そして、この番組に出るような医者はいつもは良い仕事をされているかも知れないが、「おっちょこちょい」だと思います。思慮深い人はこういう番組には出ないでしょう。この番組が多くの人の時間と心の平穏と財布の重さとそして健康を損ねているという事態を知っていればです。しかし結局は、番組は視聴率が勝負ですから仕方ないでしょうね。視聴率を上げている人の責任でしょうね。

 糖尿病以外の場合では、常識的な食生活と多少のウォ−キング程度の運動などを心がけても、血圧や検査値の改善が不十分な場合は、薬の服用が勧められます。単純明快です。薬が絶対いやだから、極端な食生活や過重な運動を試みようとされる場合がありますが、目的が健康というのであれば、私は良くないと思います。「極端な食事の研究」とか「運動でどこまで筋肉がつくか」などが目的なら別ですが。

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